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KABA-BAG

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2016年 06月 10日

鹿革報告

今年3月に納めたお仕事の報告を。

「山梨県産鹿革を利用した服飾等試作作品の制作」というお仕事を頂きました。
今山梨県には「共存するのに丁度良い感じ〜の20倍の鹿」が生息しているらしく。
畑を荒らしたり、蛭を持ち込んだりとま〜人にとっては良い事ナシで駆除しなければ、で。
既にそのお肉は上手く流通し始めてるので、皮もどうにかならないか?という「研究」の為の試作品を作るお仕事でした。

赤いのが羊、白いのが鹿、黒が牛。
定規は1m。大きさ的にはこんな感じ。
羊、鹿は「1頭」ですが、牛は「半頭」でこの大きさ!
鹿革報告_c0185674_12121583.jpg

お肉もですが(穫ってから加工までの時間等、アレコレ手を掛けないと美味しく食べれない)皮も革に加工(皮を「鞣し」で革にします)するとなると難しくて。
鞣しも極力エコな方法を考えると(現代の加工方法は非常に環境に宜しくないのです)結果、時間もお金も掛かった超高級革!になっちゃうんだけど、この辺もまだ「研究」だから。
今回は未染色ですが、ゆくゆくは「印伝」も。

お話頂いた時点ではまだこの鹿革が一枚も手元にない状態で。
「革に合わせて作るものを決める」若しくは「作るものを決めてから革を選ぶ」ので
モノによって出来る出来ないがあるんですが、ソコは「研究」なので「これは向いてないね〜」も含めて制作しなければならず、それが一番難しかったです。
第一鹿革を切ったり縫ったりした事無かったし!
鹿革報告_c0185674_1234453.jpg

取りあえず同じ位の質感、厚みかな?の牛革で作ってみたシャツがいい感じで。
芯いらないし、洗濯も出来るし「やっぱ柔らい鹿革に向いてるのは服!」と思ってたんですけど......
鹿革報告_c0185674_12343387.jpg

これが鹿革で作った完成品。厚みの割にしなやかなんだけど、重いんだよ。
モッチリとした弾力が縫いにくいし、かといって「漉く」と伸びる扱いにくい革。
「触って弄ってみるまで分からなくて!」って言い訳したいんだけど「出来ます!」って言っちゃった手前なんとかするしか無く(笑)枚数に余裕も無くてヒヤヒヤでした。
革が小さいので裁断もパーツ毎に複数枚使う事になり。
(コレは試作の牛革↓で裁断したもの。定規は60cm。結局シャツは支給の鹿革7〜8枚使ったかと?)
鹿革報告_c0185674_12181910.jpg

同じ一枚から取るよりヨレが出がち。
これが鞣し方で回避出来るのかどうか....が研究課題?

袋物系も必要な形を出すには芯材無しでは作れず。
なかなかエコな方法で鹿革を生かした製品を作るのは難しそうです。
鹿革報告_c0185674_1240113.jpg

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面積を最大に使ったbag。
クタクタのbagの方が良いと思うんだけど、トート型ご希望だったので芯材貼って。
確かに日本人はカッチリ箱形が好きなんだよね(笑)お弁当入れたいし、高そうに見えるし。

↓PCケースと紙袋型bag?どちらも「ラムース」って化繊をシール加工(もの凄く高い!)したものを貼ってます。
もう1つフラップ式のPCケースもあったんだけど撮り忘れ。
鹿革報告_c0185674_12405331.jpg

鹿革報告_c0185674_1241161.jpg

フチに樹脂ワイヤーを仕込んでます。これ牛のヌメで作ったら必要ない筈。
指示通りの形を出す為に別のエコでない素材を使う→つまりは鹿革で無くて良いって事に?
鹿革報告_c0185674_12411244.jpg

お話は年明け直ぐに頂いてたんですが、革が届いてから締め切りまで時間がなくて。
なんとか仕様書通りに仕上げてられて良かったです。
次回もお話頂けるのでしたら、まず「染色」して欲しい!
兎に角汚れやすいマットな真っ白なので、気疲れしちゃったよ(笑)
そりゃそうよ「セーム革」だもん! 手の脂も気にしちゃうよ。

山梨、鹿革、って言ったら「印伝」だと思うんですけど、
実は「鹿」でなくて「キョン」の革なんだそうですよ!中国産の。
あの模様の型紙は「伊勢型紙」だし、漆も山梨じゃ採ってないし、
それで「特産品」を名乗っていいの?って話.....
なので、増えすぎちゃった鹿が上手く使えると良いよね。
最近福島のイノシシ(汚染で処分出来ず)とか千葉のキョン(観光施設から逃げたのが繁殖)とか
害獣問題を良く聞きますね。
「害獣」なんて勝手に言ってる人間が居なきゃ起きなかった事だろうけど.......
手を出しちゃったからには人がなんとかするしかないもんね。

以上、お仕事ご紹介下さった方へ(S田さんありがとう!)報告がてら。
4月まではダメ!だったので、以降「真田丸」見る度に(篭手の下に着ける手袋に印伝らしきモノが!)
「そうだ!忘れないうちに!」と思いつつなかなか、でした。

by kaba-bag | 2016-06-10 13:19


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